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2019.10.02

体外受精・顕微授精

卵子凍結とは?体外授精したときの妊娠率、費用方法リスクまで解説!【不妊治療専門医監修】

将来の妊娠・出産に備えて、卵子凍結を考える女性がふえています。実際に卵子凍結を行っているオーク銀座レディースクリニック(オーク会)の船曳美也子先生は「卵子凍結は、将来、子どもを産むにあたって現在できる現実的、科学的な方法」といいます。
オーク銀座レディースクリニックの「卵子凍結セミナー」に編集部がおじゃましたところ、30代と思われる女性で満員。なかには、友だち同士や母娘で来ている人も。その様子から、卵子凍結はもう身近な存在なのだと実感しました。それだけに、リスクも含めて正しい知識を得ることが大事です。
この記事では卵子凍結についての「これまで」、そして「これから」を船曳先生にくわしく伺い、レポートします。

卵子凍結とは?

卵子凍結とは、女性の卵巣から取り出した卵子を、受精していない「未受精」の状態で凍結して保存することです。

不妊治療では、精子と卵子を受精させた受精卵(胚)を凍結し、それを子宮に移植して妊娠をめざしますが、卵子凍結は、受精させずに卵子をそのまま凍結するものです。

凍結未受精卵でも妊娠、出産できることがわかり、2013年に欧米で卵子凍結が認められました。

未受精卵子の凍結保存とは?

医学的適応の未受精卵子凍結

未受精の卵子を凍結するケースとしては、まず医学的な適応があります。

生命を脅かすがんなどの病気にかかって、その治療をしなければならない場合、治療により卵巣機能が低下する可能性があります。すると、卵巣内の卵子そのものがなくなってしまうことも考えられます。

こうしたケースでは、抗がん剤や放射線治療を始める前に卵子を採取して凍結することで、将来の妊娠へ可能性をつなげることができます。

また、海外では、40歳未満で閉経してしまう早発閉経や、子宮内膜症で卵巣機能が低下している場合、また卵巣予備能の目安であるAMHというホルモンの数値が低い場合に、卵子がなくなる前に採卵して凍結する、という治療が行われています。

このほか、体外受精を予定していたけれど、当日にパートナーが精液を採取したものの精子が見つからなかったという場合に、卵子を凍結することがあります。

社会的適応の未受精卵子凍結

一方、医学的な理由以外では、社会的な背景から卵子凍結が行われています。最近は、このケースで卵子凍結をする人がふえています。

女性は年齢を重ねるほど妊娠しにくくなっていきますが、それは卵子の老化が大きな原因です。

女性の社会進出が進み、学業に費やす時間が長くなり、就職後もスキルを身に付けたり、専門的に学んだりする人が多くなりました。キャリア形成と妊娠適齢期が重なってしまうことは、現代女性の大きな悩みです。

「将来、子どもが欲しいと思ったときに卵子の妊娠する力(妊孕性)がなくて、妊娠できないのではないか」という不安を抱える女性は多いことでしょう。「それならば、妊孕性のある若い卵子を凍結保存して将来に備えたい」というのが、最近の事情です。

2014年には、アメリカの大手IT企業が社員の出産や妊活にかかる費用を自社の医療保険でカバーすると発表、その適用の対象に「卵子凍結」も含まれていて、日本でも話題になりました。

2008年から卵子凍結を行ってきたオーク会では、この頃から卵子凍結に関する問い合わせが多くなりました。

「いつかは子どもを産みたいけれど、今は仕事や学業を優先したい」「まず、パートナーを見つけたい」という女性にとって、「卵子凍結という方法がある」と知るきっかけになったようです。

卵子凍結をする費用はどれくらい?

卵子凍結にかかる費用について紹介します。

*オーク銀座レディースクリニックの場合。料金は消費税別。
*時間外の診療には別途料金がかかります。
*料金はすべて取材時点のものです。 卵子凍結の費用は、「採卵費用」と「凍結費用」があります。

採卵費用

卵子を凍結するには、まず、卵子を採卵する必要があります。1回の採卵で複数の卵子を採取するために、排卵誘発剤を使って複数の成熟卵を育て、成熟卵が育ったら採卵を行ないます。その後、卵子の状態を確かめてから凍結します。

A[排卵誘発剤などの薬剤]
採卵するにあたり、経口薬の排卵誘発剤、ホルモン剤、排卵誘発注射など、さまざまな薬を用います。どの薬を使うか、その種類や量は人により異なります。そのため料金は人によって変わります。

B[採卵料]
0〜2個:60,000円
3〜10個:上記に加えて1個あたり5,000円
11個目〜:上記に加えて1個あたり2,500円

卵子凍結費用・保管料

卵子の凍結費用と凍結保存料は、卵子を採卵した数により料金が異なります。

例:採卵数が10個だった場合
C:凍結作業料 42,000円(30,000円+3,000円×クライオトップ)*
D:凍結保存料 1年 91,500円、2年 164,712円、3年219,600円

*クライオトップは卵子を凍結するための容器。
*凍結作業料は、採卵できた成熟卵子を3個ずつ、1つのクライオトップの上にのせて凍結したものを1単位として計算。10個の場合は、3+3+3+1で4つの容器が必要。4単位となる。

費用のシミュレーション

【例1】
排卵誘発剤を連日投与する卵巣刺激法で、採卵数10個、凍結4単位、3年間保管の場合(目安)。

A:排卵誘発料  37,910円
B:採卵料   100,000円
C:凍結作業料 42,000円
D:凍結保存料(3年)219,600円
合計 399,510円

【例2】
効き目がマイルドな排卵誘発剤(クロミッド)を服用し、採卵数2個、凍結1単位、1年間保管の場合(目安)。

A:排卵誘発料  30,930円
B:採卵料    60,000円
C:凍結作業料  33,000円
D:凍結保存料(3年)24,000円
合計 147,930円

*排卵誘発料は、使用する薬剤、超音波検査の回数、来院回数により異なります。
*採卵料金は、当日採卵できた卵子の数により異なります。

妊娠を希望する場合

凍結卵子を使って妊娠を希望する場合は、凍結卵子を融解します。また、顕微授精(ICSI)が必須となるので、その費用が発生します。

手順としては、①凍結卵子の融解、精液の採取(採精)②顕微授精③胚移植、となり、それぞれに費用がかかります。

例:
・凍結卵子融解作業料:1単位あたり20,000円
・顕微授精:1〜5個・80,000円など

*このほかにも、超音波検査や投薬などの治療が必要です。

どんな方法で卵子凍結するの?治療の流れは?

排卵誘発、採卵、卵子凍結

(1)排卵誘発

1回の採卵で効率よく複数の卵子を採取するために、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、複数の卵子を育てます。

効き目がマイルドな内服薬(クロミッド)か、卵巣に直接作用する注射(HMG)で卵巣刺激し、卵子の発育を促します。また、排卵誘発剤を使わないで自然に卵が育つのを待つ方法もあります。

卵胞が直径20mm前後に成長したら、卵子の成熟を促すHCGというホルモン剤の注射を打ちます。36時間前後に排卵するといわれているので、HCGを打った翌々日に採卵となります。

(2)採卵

クリニックで手術着に着替え、手術室に入ります。

医師が超音波を見ながら、卵巣に細い針を刺して卵子を採取します。麻酔を使うので、採卵中の痛みはありません。

しばらくベッドで休んでから帰宅します。

(3)凍結保存

超急速ガラス化法という方法で、液体窒素内で卵子を凍結保存します。一度凍結すると、液体窒素の中で半永久的に同じ状態を保つことができます。

凍結の際に細胞内に氷の結晶ができると、細胞は破壊されて死んでしまいます。細胞を生きたまま凍結するために、耐凍剤(クライオプロテクタント)を用います。

凍結した卵子は、液体窒素のタンクに入れて保管されます。

卵子の凍結から融解までの卵子の様子

卵子は液体窒素の中で凍結保存されています。その凍結卵子を融解する場合、加温に時間がかかると細胞内に氷晶が生じて細胞が壊れてしまいます。それを避けるために超急速加温法という方法で融解します。

凍結卵子(細胞)を加温にして融解し、クライオプロテスタントによって脱水・濃縮している細胞を元に戻します。細胞が元に戻って発育が再開するのを確認します。

細胞が元に戻ったことが確認できたら、顕微授精を行います。

凍結前の卵子 脱水・濃縮した卵子 融解後の回復した卵子

卵子凍結のメリット・デメリット、リスクは?

卵子凍結のメリットとデメリット、そしてリスクは、どんなことでしょうか? 以下にまとめました。

[卵子凍結のメリット]

①現時点でもっとも妊娠する可能性が高い卵子を凍結して、保存することができる
②早発閉経や妊娠の可能性を低下させる子宮内膜症などで妊娠・出産ができなくなるリスクを減らす。

[卵子凍結のデメリット・リスク]

①妊娠を希望する場合には、必ず顕微授精が必要になる。
②排卵誘発剤の使用による副作用として、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こることがある。
③凍結卵子を長期保存する場合には、災害時や凍結保管している施設の倒産などのリスク。
④凍結卵子を用いても妊娠率は100%ではない。
⑤高齢出産のリスク。

凍結卵子を体外受精した場合の妊娠率は?

凍結卵子による妊娠率は、どのようになっているのでしょうか?

凍結卵子での妊娠を望む場合には、「顕微授精」が必須となります。顕微授精は、1つの精子を直接、卵子に注入する方法です。

卵子は卵丘細胞という細胞に包まれていますが、卵子凍結の際には卵丘細胞を除去します。卵丘細胞がついていない卵子に、精子は自力で入ることができません。そのため、凍結融解した卵子の受精には顕微授精が必要になります。

凍結卵子で顕微授精を行なった場合の妊娠率は、以下のようになっています。 

●海外(社会的適応、2008〜2011年)

●日本(医学的適応、2006〜2011年)

*参考・凍結胚による生産率:23.3%(2011年)

卵子凍結は何歳までできる?年齢制限はある?

日本生殖医学会では、医学的適応のない卵子凍結は「40歳未満が望ましい」としていますが、体の状態や卵子の質は個人差が大きいので、オーク会では特に年齢は定めていません。一律に年齢で区切るのではなく、本人が希望して、卵子が成熟すれば採卵を行います。

採卵できるかどうかを判断するためには、AMHというホルモンの数値を調べるほか、各種の検査を行って可能性を推測します。

卵子凍結をしておける期間は?

卵子を凍結保存する期間については、技術的には半永久的に可能です。

凍結卵子による顕微授精をいつ行うか、何歳まで可能かという点ですが、生殖専門医の間では、45歳くらいが目安とされています。

妊娠すると、母体ではそれまでの1.5倍の血液が流れ、血管もやわらかくなります。そのため妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高まります。妊娠中に加え、出産にもリスクが伴いますし、そのあとには育児が待っています。高齢での妊娠・出産のリスクについて、十分理解しておく必要があります。

融解後の卵子を再び凍結しておくことはできる?

凍結卵子を融解し、その後、再び卵子を凍結することは可能です。

ただし、凍結卵子を融解するのは妊娠に向けて顕微授精をするためだと思いますので、もし再び凍結するのなら、顕微授精をした受精卵(胚)を凍結するのが現実的といえるでしょう。

どんな人が卵子凍結をしているの?

医学的適応を除いては、30代後半から40歳前後の働く女性がほとんどです。

「いつかは子どもが欲しいけれど、今はパートナーがいない」
「パートナーはいるものの、まだ結婚していないので妊活は先になる」
「子どもについて考えてはいるが、未婚であり、今は仕事でキャリアを積みたい」

いずれも「若い年齢のいまのうちに卵子を凍結しておいて将来の妊娠に備えたい」と希望してのこと。「少しでも将来の妊娠の可能性を高めたいから、今できることをしよう」という意識がうかがえます。

事例紹介

妊活中でありながら卵子凍結を希望したケースもあります。

 * * *

30代後半のHさんは、体外受精の治療で当院を受診しました。外来で説明していると、卵子凍結についても質問してきます。そして「複数の卵子が採卵できたら、半数は凍結してほしい」というのです。

体外受精と同じ方法で卵巣を刺激して採卵するので、受精させずに卵子だけ凍結することは可能です。でも、結婚しているのに、どうして卵子凍結をするのでしょうか?

不妊治療の診察をしていると、数年して別なパートナーと再び治療に来る患者さんがいます。今はいっしょに不妊治療をしている夫とはいえ、この先もずっと仲良くいられるかは、わかりません。もしも将来、パートナーが変わって妊娠を希望したときのために、若い卵子を凍結しておく。そうした女性もいるのです。

乳がん患者ほか、卵子凍結が有効となる病気は?

卵子凍結の医学的適応としては、乳がんをはじめとする悪性腫瘍や血液のがんである白血病などがあります。また、良性の卵巣にかかわる疾患も適応になります。

もともとの疾患(原疾患)の状態などにより、卵子凍結をすることが原疾患の治療に及ぼす影響を考える必要があるので、原疾患の主治医と生殖医療の担当医が情報を共有して進めることになります。

日本産科婦人科学会の考え方、ガイドラインについて

日本産科婦人科学会では、2014年に医学的適応による卵子凍結については肯定的な見解を発表しましたが、社会的適応の卵子凍結については推奨していません。

また、日本生殖医学会は、2013年に社会適応による未受精卵子の凍結・保存のガイドラインを発表しています。

それによると、未受精卵子等の採卵時の年齢は40歳以上は推奨しない、凍結卵子の使用時の年齢は45歳以上は推奨できないとしています。一方で「加齢等の要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合には、未受精卵子あるいは卵巣組織を凍結保存することができる」とも記載されています。

卵子の凍結保存について、学会による見解やガイドラインはあるものの、日本では法整備がされていないのが現状です。

船曳先生からのメッセージ

まだパートナーがいなかった女性が、卵子凍結をしたことで婚活に積極的になるケースがあります。なかには、卵子凍結後ほどなく結婚し、自然妊娠、出産された方もいます。40歳を超えたこともあり、「2人目の子どもは凍結卵子を使って」と希望されています。

卵子の老化は、現代を生きる女性にとって現実的に厳しい問題になっています。社会環境や労働問題など多くの課題があり、すぐに解決は難しいでしょう。でも、そうした状況において、将来に妊娠の可能性を広げるのが「卵子凍結」なのです。

自分の生殖のあり方について、どうするかを決めるのは自分自身です。そのためにも、ぜひ正確な情報をキャッチしてください。

編集部まとめ~取材を終えて

女性にとって、今この瞬間のいちばん若い卵子を凍結保存することは、時空をこえて妊娠の可能性を広げる技術といえます。とはいえ、それは将来の妊娠の可能性へのあくまで選択肢の一つ。卵子凍結したからといって妊活を先送りしない意識は必要といえます。(赤ちゃんが欲しい編集部)

取材・文/高井紀子 画像提供/医療法人オーク会 構成/木村亜紀子

取材協力クリニック

医療法人オーク会

https://akahoshi.net/facility/clinic/detail-25.php

https://www.oakclinic-group.com/

船曳美也子先生

著書『女性の人生ゲームで勝つ方法―恋もキャリアも出産も!』

体外受精、卵子の老化、卵子凍結など、不妊治療の第一線で活躍する立場から、最新情報についてもわかりやすく解説。仕事に懸命に生きてきた女性が、いざ出産を考えるときに初めて卵子が年齢とともに老化し、30代後半から妊娠率が著しく下がることを知る例は少なくありません。女性に知ってほしい現実を具体的にお伝えします。

【監修】 船曳 美也子 先生 オーク住吉産婦人科

神戸大学文学部心理学科、兵庫医科大学卒業。早くから不妊と肥満の関係性に着目し、2カ月で14kgの減量に成功した患者の排卵障害が改善したことから、ダイエット・プログラムを発案。 自身も10回の体外受精を経て出産をした不妊治療経験者。著書に『女性の人生ゲームで勝つ方法』(主婦の友社)がある。 医療法人オーク会 www.oakclinic-group.com

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